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2012年8月12日 (日)

≪漢詩鑑賞≫夏目漱石最後の漢詩

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この漢詩(無題)は、大正5年11月20日の作品である。その19日後の12月9日に夏目漱石は亡くなっている。つまり夏目漱石の最後の漢詩である。尾聯の二句は、自分の死を予言するかのようである。

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無題 <七言律詩>

眞蹤寂寞杳難尋  眞蹤(しんしょう)寂寞杳(よう)として尋ね難し

欲抱虚懐歩古今  虚懐を抱いて古今を歩まんと欲す

碧水碧山何有我  碧水(へきすい)碧山(へきざん)何ぞ我有らん

蓋天蓋地是無心  蓋天(がいてん)蓋地(がいち)是れ無心

依稀暮色月離草  依稀(いき)たる暮色月草を離れ

錯落秋聲風在林  錯落(さくらく)たる秋声風林に在り

眼耳雙忘身亦失  眼耳双(ふた)つながら忘れ身も亦失す

空中獨唱白雲吟  空中に独り唱う白雲の吟

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真理の道(眞蹤)は、寂しく杳然として尋ね難い。

何ものにもとらわれぬ心(虚懐)を抱かんとして、古今の文化を探求してきた。

みどりの山河(碧水碧山)にはどうして私心などあろう。

天地の全体(蓋天蓋地)は無心そのもの。

ぼんやりした(依稀)暮色の中、月は草原を離れて上り、

入り混じった(錯落)秋の物音の中、風は林をゆるがす。

眼も耳も、ともにその識力を失い、精神は肉体を離れていく。

虚空に向かって、ただ白雲のごとき「自由」の詩を歌う。

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