« ≪書評≫ TPP亡国論(中野剛志著) | トップページ | 石原知事の定例会見(1月20日) »

2012年1月20日 (金)

≪漢詩鑑賞≫兵車行(杜甫) 

P200607181022583050612185

◆時代背景

杜甫41歳の作。この詩は通行人と兵士との会話という形でうたわれている。当時唐の国境付近では、北方の異民族の侵入が相次いだ。その討伐のため政府は重税を課したので、国民は次第に疲弊していった。

中国では昔から、男を生むのは玉を生むこと、女を生むのは瓦を生むことと言われ、これまでは男の子が生まれるのを喜ぶ社会通念があった。それが、男はどうせ戦争で死ぬのだからと、その“社会通念”が逆転した。

※白居易の『長恨歌』でもおなじようなことをうたっている。

姉妹弟兄皆列土  姉妹弟兄皆土を列ね

可憐光彩生門戸  憐れむべし光彩門戸に生ず

遂令天下父母心  遂に天下の父母の心をして

不重生男重生女  男を生むを重んぜず女を生むを重んぜしむ

※列土 諸侯となって領土を連ねること。楊貴妃の従兄楊国忠は宰相にまでなった。

女を生めば玉のこしと言われた所以である。

======================

兵車行(へいしゃこう) 杜甫

車轔轔 馬蕭簫  車轔轔ゴロゴロときしむ音馬簫簫馬の泣き声

行人弓箭各在腰  行人出征兵士の弓箭(きゅうせん)各腰に在り

耶嬢妻子走相送  耶嬢(やじょう・父母妻子走りて相送る

塵埃不見咸陽橋  塵埃(じんあい)にて見えず咸陽橋(かんようきょう)

牽衣頓足攔道哭  衣を牽(ひ)き足を攔(さえぎ)りて哭(こく)

哭聲直上干雲霄  哭声直ちに上りて雲霄(うんしょう)を干(おか)

道旁過者問行人  道旁(どうぼう)を過ぐる者行人に問う

行人但云點行頻  行人但だ云う点行徴兵(しき)りなりと

或從十五北防河  或いは十五より北河(きたか・黄河を防ぎ

便至四十西營田  便ち四十に至って西田(でん)を営む屯田兵

去時里正與裹頭  去る時里正(りせい・村長(ため)に頭を裹(つつ)

歸來頭白還戍邊  帰り来って頭白きに還た辺(へん)を戍(まもる)

邊庭流血成海水  辺庭(へんてい・国境の辺り流血海水と成るも

武皇開邊意未已  武皇唐の玄宗を指す辺を開く意未だ已(や)まず

君不聞漢家山東  君聞かずや漢家山東の二百州

二百州

千邨萬落生荊杞  千村(せんそん)万落(ばんらく)荊杞(けいき)を生ずるを

縦有健婦把鋤犂  縦(たと)い健婦の鋤犂(じょれい)を把(と)る有るも

禾生隴畝無東西  禾(か・は隴畝(ろうほ・うねあぜ生じて東西無し

況復秦兵耐苦戦  況(いわ)んや復た秦兵苦戦に耐(た)うるをや

被驅不異犬與雞  駆(か)らるること犬と鶏とに異らず

長者雖有問     長者杜甫を指す問う有りと雖(いえど)

役夫敢伸恨     役夫(えきふ・出征兵士敢えて恨みを伸べんや

且如今年冬     且つ今年の冬の如きは

未休關西卒     未だ関西函谷関の西の卒兵卒を休めざるに

縣官急索租     県官(けんかん)急に租租税を索(もと)むるも

租税從何出     租税何(いず)くより出(い)でん

信知生男惡     信(まこと)に知る男を生むは悪しく

反是生女好     反(かえ)って是れ女を生むは好きを

生女猶得嫁比鄰  女を生まば猶お比隣ひりん(か)するを得るも

生男埋沒随百草  男を生まば埋没して戦死した死骸は埋もれ百草に随う

君不見靑海頭   君見ずや青海(せいかい)の頭(ほとり)

古來白骨無人収  古来白骨人の収(おさ)むる無きを

新鬼煩冕舊鬼哭  新鬼新しく死んだ人の幽霊は煩冕(はんえん)し旧鬼は哭す

天陰雨濕声啾啾  天陰り雨湿(けぶ)るとき声啾啾(しゅうしゅう・亡霊の泣き声

====================

|

« ≪書評≫ TPP亡国論(中野剛志著) | トップページ | 石原知事の定例会見(1月20日) »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/564386/53779150

この記事へのトラックバック一覧です: ≪漢詩鑑賞≫兵車行(杜甫) :

« ≪書評≫ TPP亡国論(中野剛志著) | トップページ | 石原知事の定例会見(1月20日) »