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2012年1月19日 (木)

≪書評≫ TPP亡国論(中野剛志著)

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◆TPP反対派の理論的リーダー

中野剛志氏(京都大学大学院工学研究科助教)は、TPP反対派の理論的リーダーの一人である。

そして、この著書『TPP亡国論』は、TPP反対派のテキストにもなっている。

2010年10月下旬までは、「大学での自分の研究が忙しくて」TPPには「あまり関心がありませんでした」(16p)と書いている。

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◆これは「経済論文」である

その中野氏が僅か4ヶ月後~2011年2月には、インターネット検索を駆使しながら『TPP亡国論』(254ページ)を書き終えている。

超能力者のようなスピードである。

これは、経済学者の経済論文の“領域”でのTPPに関する主張である。

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◆中野氏は愛国者ではある

弱冠40歳の経済学者の中野剛志氏は、「TPPへの参加など、論外です」(248p)と言いきっている。

すごい自信であるネエ。

この本を読むと中野氏は、優秀な経済学者(経済ナショナリズムが専門)であり“愛国者”である事が分かる。

それに、中野氏が著書でくり返し述べているTPP賛成論・批判は大部分はその通りである。

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◆正義が勝つとは限らない

中野氏の思考の根底には、「正しい者(正義)が勝つ」という“オポチョ二スト”が見える。

どこか「痩せても枯れても・・・」という“武士道精神”が宿っているようだ。

だが、正しい者が勝つとは限らないのが世の中の不条理である。

大東亜戦争(太平洋戦争)をふり返るまでもなく、「正義(日本)は、連合国側(米英仏露中)に負けた」のである。

勝つのは「正しい者」ではなくて、「力のある者」が勝つのである。

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◆民主党政権の欺瞞

中野氏はTPP賛成派(民主党政権)を鋭く批判している。

①「基本的な事実認識の誤りがあまりに多すぎる」

②「経済運営の基本をあまりに知らなすぎる」

③「世界の構造変化やアメリカの戦略をまったく見誤っている」という主張である。

TPP(環太平洋経済連携協定)参加の方針を突如打ち出し、「平成の開国を!」と喧伝した民主党政権。そして賛成一色に染まったマス・メディアを鋭く批判している。

経済学者・中野氏の批判は「正論」ではある。

しかし、(政治的な「選択肢」としては)非現実的である。

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◆経済学者の思考回路

TPPを、損得勘定(メリットorデメリット)で考えるのが経済学者の思考回路である。

経済において「勝ち組」がいれば「負け組」がいる。国家間においても、「敗者」が居て「勝者」が存在する。

中国相手に「互恵」関係は存在しない(あり得ない)のである。

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◆グローバリズムとは?

グローバリズムというのは、「弱肉強食」の世界である。

だからTPPの是非を「メリット」「デメリット」だけでは判断できない。

経済学者は、「過去の損得勘定」は分かっても、「将来の予測」は不可能である。将来どうなるかは、誰にも解からない“神の領域”である。

経済学者の(政治的)限界である。

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◆TPPの本質とは?

TPPの本質とは、如何に「デメリットを最小限に抑えるか」という、国家の独立自尊を賭けた戦いである。

つまり「正しいものが勝つ」という損得勘定よりは、「力のある者が勝つ」という国家の“生存本能”に近いものである。

力とは、軍事力や外交力、「外交力」とは具体的には“外交交渉力”のことである。

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それに・・・現実は、民主党政権が無防備にTPP参加に突き進んでいる。「平成の開国」(菅)でもないし、「ダメなら止めれば良い」(前原)という段階を超えて、野田政権になって更に遙か引き返せない所まで来てしまっている。純粋経済学者で「楽天主義者」の中野氏には、この辺の現実認識がない。

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